隠し剣鬼の爪をみた。

友人のれいちゃんお奨めの藤沢周平作品です。
いつものように、ランニングマシーンに乗っかりながら鑑賞。
序盤、軽快に飛ばしながらも
松たか子の美しさにはからずもペースが落ちる。

物語の舞台、海坂藩(うなさかはん)といえば
藤沢周平の生まれ故郷のほど近く
庄内平野に位置する城下町鶴岡。時は文久元年。
海坂藩のような東北の小さな藩にも
幕末のうねりは少なからず押し寄せていたようです。

海坂藩の下級武士、片桐宗蔵(永瀬正敏)は
母と妹、下女のきえ(松たか子)と共に
貧しいながらも平和な毎日を送っていました。
が、時は過ぎ、妹もきえも嫁に行き、母親は亡くなって
片桐家は櫛の歯が抜けたようにわびしい男所帯となってしまいます。

とある冬の日。
城下の小間物屋の店先で、宗蔵ときえは思いがけず再会するのですが
きえの、白いうなじにほつれかかるおくれ毛のせいでしょうか
ランニングのペースはここからグッと落ちてしまいます。
一見して、嫁ぎ先での幸薄い境遇が、ありありと影を落とすきえの背中に
思わず引き込まれてしまいました。
もちろん引き込まれたのは僕だけじゃなくて、宗蔵もしかり。
一瞬、かけてやる言葉が見つからない宗蔵は
半襟を買ってやると言うんですね。
んー・・・半襟を買ってやる・・・これは意外だった!
なにかとても即物的な行為のように思うけれど
永瀬演じる宗蔵が言うと、実に誠実に響くから不思議です。
二人の間で何気ない言葉が交わされ、きえの目から涙が溢れ出す。
しんしんと降り積もる雪は
無言のまま、虐げられた者の悲しみを覆い尽くす。

ここからはもう、ランニングとかいってる場合じゃないです。
ちょっと本腰をいれて鑑賞しちゃいました。

幕末といえば、新選組、坂本竜馬、西郷隆盛などなど
明日の日本を語り、策を労し
人を斬り倒してきた名だたるヒーローたちが群雄割拠した時代。
そんな中にあって、一人の女を守ることに命をかけた宗蔵が
かっこ悪いのかといえばけしてそうじゃない。
かつての宗蔵の同門、尊皇攘夷に翻弄され
謀反を起こした狭間弥一郎と宗蔵が
終盤、斬りあいになる場面があるのですが
この宗蔵がめちゃめちゃかっこいい。
宗蔵の、寓直なまでにひたむきな誠実さは、幕末の喧騒を
何か虚しいものにしてしまうほど重いのです。

というわけで、「隠し剣鬼の爪」
途中からランニングマシーンのスイッチを切り
僕が前のめりに正座してみることになった、なかなかの秀作でした。

んで、なにが隠し剣かというと、蜂の一刺し・・・かな?

そして今日のワイン。
トランブスティ社のキャンティ バッディオロ リゼルバ 
クローヴなどのスパイスとダークチェリーが口中に広がりました。
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by henrri | 2005-10-04 23:30 | 映画・ドラマ
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