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ギュスターヴ・モローをみた

上野で見て以来、3年ぶりのモローです。
サロメの出現や、ギリシャ神話の中のセイレンは今回が2度目。
前回、とても惹かれるものがあったので
160点あまりの展示は十分に満足できるものでした・・・が
展示期間中、前期と後期で展示内容が変わるんだとか
んー・・・前期も見ておくんだった。

ギリシャ神話は、多くの画家によって描かれてきました。
モローもまた、ギリシャ神話を好んで描いています。
彼の描く作品は、この上なく幻想的でため息がでるほど美しいのですが
数ある作品の中には
神様たちの滑稽な日常が見え隠れするものもあったりして
(もちろんオイディプスのような悲劇的な作品もありましたが)
なかなか楽しいひと時を過ごしました。

中でも笑えるのが全智全能の神ユピテル(ゼウス)。
こいつがもうどうしようもない女ったらしで
綺麗な女と見ればヤルことしか頭にない。
何が何でもヤル!誰がなんといおうとヤル!というとんでもない神様。
まぁ、全智全能の神様中の神様だから、何でもありってことでしょうね。
このユピテル、やってることは極悪なんですが
どうも女(時に男)をモノにするやり方が、稚拙というかひどく可愛らしい。
白鳥になってこっそり意中の人に近づき、事を成就させたり
女の好みそうな、美しい白い牡牛に化けて油断させ
好機とみるや強引に連れ去ったり
あろうことか、美しいいたいけな少年まで
鷲に姿を変えて連れ去ってしまう。
やりたい放題の悪代官より始末が悪い。
その結果、あちこちに神の申し子を遣わすことになるのです。

ギリシャ神話は、ご存知のようにキリスト以前に生まれたものです。
そのため、キリスト後の倫理観とは全くかけ離れていて
シェイクスピアのような教訓めいたところはほとんどありません。
不倫あり、同性愛あり、インセストありのとんでもない世界ですが
ユピテルのような荒唐無稽とも思える手練手管(といえるのか・・・?)が
古今東西の芸術家の絵心を刺激したのでしょう。

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次回はキリスト後のシェイクスピアを。

そして、今日のワイン
シャトー・トゥール・デュ・ペシュ
このシャトーの家系は、「星の王子様」で有名なサン・テクジュペリ家の直系だという。
プルーンなどの黒っぽい果実の香りが、
時間とともに立ち上がってくる。
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by henrri | 2005-10-07 00:19 | アート
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