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スワンレイク

今日は、伝統に敬意を表しつつ
常に戦いを挑んでいるもう一人のアーティストについて ―――
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4・5年ほど前に見た、「リトルダンサー」
という映画の中のワンシーンがとても印象に残っていて
以来、マシューボーンというバレエの振り付け家の名前が
僕の記憶に刻まれる事になりました。
彼の手によるスワンレイクは、白鳥のコールドが全員男性という
常識を覆すような斬新な手法が用いられ
日本でも熱狂的なファンに支えられて、何度も来日公演を行っています。

現代において上演されているクラシックバレエの多くは
19世紀後半に、M・プティパによって振付けられたものですが
マシューボーンのスワンレイクを見てしまうと
やはり、チャイコフスキーは、このスワンレイクのために
作曲したのではないだろうか?と疑ってしまうほど美しいのです。
もちろん、鶴の人形焼き(白鳥よりさらに細い)
のようにそろえられたフォルムのダンサー達による
伝統的コールドバレエも美しいのですが
マシューの白鳥たちは、悲しむだけの白鳥ではなく
時に怒り、挑発し、戦う白鳥なんですね。
そして、チャイコフスキーの時代には、上流社会だけの娯楽だった
バレエという文化に、男性である白鳥と王子の恋や
ハムレットを思わせるような王子と母親
王室とそれを追いかけるパパラッチなどを配して
全く新しい、アイロニーに溢れた作品に仕上げています。
そんなところが、この「リトルダンサー」という
潰れかけた貧しい炭鉱の町に生まれ、偏見の目にさらされながらも
バレエダンサーを夢見る少年の物語に、ぴったりだったのかもしれません。

最も印象に残った場面は2幕の湖のシーン。
ダンサー達の、力強く流れるような美しい筋肉の躍動が
音楽と空間とを完全に一つに融合し
息苦しいほどに空気を濃密にしていきます。

<今日のワイン>
スワンレイク_e0090389_11595568.jpg

久々のワイン会です。
ラ・グラン・リュ、クロ・ド・ヴージョ、シャトー・トロタノワ、
シャトー・フィジャック
グラン・リュは土、ヴージョは花、フィジャックは力強さ、
トロタロワは開くのに時間がかかったけど、開いてからはすごかった。
どれもが美味しく、堪能いたしました。
by henrri | 2005-10-15 02:28 | バレエ
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