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くるみ割り人形のこと

マシューのことをもう一度書きたくて
ネットでいろいろ写真を探していました。
スワンレイクも衝撃的な作品でしたが
くるみ割り人形の衝撃はそれを超えるものでした。
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二幕の華やかなシーンの写真は、どこのサイトにも沢山ありますが
僕が探していたのは一幕の冒頭。これがなかなかない。
結局見つけられませんでしたが・・・。
モノクロの地味なシーンは人目を惹かないのかもしれません。

プティパのくるみ割り人形の一幕は
華やかなクリスマスパーティーの場面から始まります。
大きなツリーのそばに赤々と燃える暖炉
シルクと宝石で着飾った大人たちのまわりを
上質な晴れ着を着た子供達が駆け回っています。
この華やかな場面、マシュー版くるみ割り人形では
舞台全体が、冷たく殺風景な色で覆われています。
固く冷たいベッドが並び
子供達は灰色や黒の同じ形の粗末な服を着せられています。
マシュー版は、孤児院の一室から物語が始まるのです。
僕たちが見慣れているくるみ割り人形では
いつもきれいに着飾った子供達が笑っていました。
まるで、子供というものは、クリスマスには世界中どこでも
こんな風に着飾って笑うものなのだとでも言うように。
世の中に、プティパのようなくるみ割人形しかないのは
不公平だとずっと思っていた僕にとって
マシューのくるみ割り人形は、とてもセンセーショナルに思えました。
当時、ある一部の階級のものでしかなかった作品を
みんなのものにした・・・
というと僕がプロレタリアアートの信者みたいだけど
どう言えばいいのか・・・くるみ割り人形を自由にした人として
マシューボーンは鮮烈に僕の心に残る人になりました。
<今日のワイン>
くるみ割り人形のこと_e0090389_23285052.jpg

陽気に騒ぎたい時も、つかの間の静寂にも、
シャンパーニュはこれ、ドンペリニョン。
ああマシュー、これももっと自由にしてくれ。
by henrri | 2005-10-25 09:09 | バレエ
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