カテゴリ:映画・ドラマ( 7 )

THE 有頂天ホテルを見た

三谷幸喜作、監督のTHE 有頂天ホテル。
見ているこっちが有頂天になりそうな豪華キャストである。

群像劇は彼の得意とするところだが、これだけのキャストを
惜しげもなく次々に登場させ、ストーリーにちょっと絡ませたかと思えば
贅沢にも、本筋とは全く関係なく、作品の薬味として使うあたりは
まさにエンターテイメントの限りを尽くした映画といえるだろう。

彼の凄いところは、一見脈絡のないストーリーが複雑に交差しながらも
けして着地点を見失わないというところにある。
彼の脚本による作品は本当に安心してみていられる。
それぞれのキャラクターはもちろん
芝居の小道具にいたるまでけしてなおざりにしない。
大勢の役者たち、小道具たちが、中盤から絶妙なハーモニーを奏で
ラストに向かってうねりながら一つになり、心地よく完結する。

大晦日の夜、このホテルの客や従業員たちのそれぞれが
まるで自分のなくした夢や希望、見失った道や愛情を
手繰り寄せるようにしてホテルに集まる。
その登場人物のどれをとっても
脚本家に愛されて、育まれたキャラクターだという事が随所に感じられる。
彼らの住む家の間取りや、昨日の夕食のおかずまでが見えてくるようだ。
三谷氏の手にかかれば、彼らは、作られた人物とは思えないほど
活き活きと動き出す。

近ごろ、嫌な日本人の顔ばかりが紙面を賑わせている。
自分の人生や仕事に誇りのかけらも持てずに
暴かれた罪を弁明する者、ひたすら鉄面皮に表情を隠して謝る者。
実在する人間よりも、スクリーンの中の人物の方が
より人間らしく温かいとはなんとも皮肉な話しだ。

作品全体が、古き良きハリウッド映画を思わせるような
上質な音楽とウイットに富んだジョークに包まれながらも
大人のセンチメンタリズムを漂わせた秀作である。e0090389_18373159.jpg
[PR]
by henrri | 2006-02-11 18:20 | 映画・ドラマ

フラガール

Excite エキサイト : 芸能ニュース
福島県いわき市にある、スパリゾートハワイアンズという
アミューズメント施設の成り立ちを描いた作品が、この夏公開されるそうだ。
この施設は、以前、常磐ハワイアンセンターと呼ばれていた。
いかにも、日本の経済成長が加速されつつあった
昭和の時代背景を彷彿とさせられるネーミングである。
戦後、蝶よ花よともてはやされた炭鉱の町が
みるみるうちに斜陽の一途をたどり
人々の記憶の彼方に葬り去られる様には
確かに悲哀に満ちたドラマがあるし
加えて、全てを失ったところから
再び町を甦らせるというストーリーなら、なおさら興味深い。

常磐ハワイアンセンターの名を初めて目にしたのは
野坂昭如のエッセイだった記憶がある。
多くの炭鉱の町が、長雨に腐されるようにしおれ没落していく中で
唯一観光産業に活路を見いだし、貪欲に夢を実現していったのが
常磐炭鉱に暮らす人々だった。
野坂氏は、どん底から這い上がろうとする彼らに
戦後の廃墟から力強く立ち上がり、生きる事を諦めなかった
野太い市井の人々の姿を重ね合わせていた。

時流に乗って、スパリゾートハワイアンズと改名したものの
常磐ハワイアンセンターというネーミングの持つ響きには
御当地ハワイの、燦燦と降り注ぐ南国の太陽にも負けない
明るくエネルギッシュな炭鉱の町の人々の笑顔が、不思議と浮かんでくる。
戦後の日本を支えてきた人々の笑顔である。
久しぶりに、直球の、素朴なエネルギーに満ちた映画が見られそうだ
[PR]
by henrri | 2006-01-18 09:46 | 映画・ドラマ

春の雪をみた。

e0090389_2332518.jpg

原作を読んでしまってからの鑑賞はちょっと辛かった。
自分の膨らんだイメージから少しでも外れるとしらけてしまうから。
特に三島作品は難しいと思う。
並みの作家の本なら、場合によっては
二次元の世界を三次元に立ち上げてくれる映像のほうが
はるかに受け入れ易かったりもするけど
三島に限って言えば、その絢爛たる言葉の金糸を縦に横に
繊細に、綿密に織り上げる世界のほうが、はるかに説得力がある。
三島の言葉で紡ぎだされる清顕より美しく儚い清顕はいない。
清顕と聡子の悲恋に涙するのではなく
清顕の存在そのものが慟哭するほどに美しいのだ。
本来なら清顕は、人知の及ばない
壮大な時の流れを支配するものによって選ばれた、特別な人間故に
特別な役者にしか演じることを許されない役なのだと思う。
しかし、豊饒の海全編を貫く
60余年という時のうねりの本流にある
輪廻転生が描かれないのであれば
清顕の存在は何の意味も持たないことになってしまう。
他に方法はなかったんだろうか?

原作とは関わりなく、アイドル映画としてみれば
そこそこの秀作かもしれないけど・・・。
[PR]
by henrri | 2005-12-23 00:55 | 映画・ドラマ

新選組!!そのⅡ

新選組!を語らせたら最後、止まらなくなるので
新選組!とワインの話しを少し。

近藤勇が京に上る少し前
師範になるべく、講武所を訪れた勇が門前払いをくらい
途方にくれる場面で坂本竜馬に出会う。
竜馬に連れられて、供の藤堂平助と訪れたのが
海運奉行の勝海舟の家。
当時の尊皇攘夷とは一線を画し、もっと広い視野に立って
諸外国と日本を見つめていた勝海舟の居室は
多摩の田舎侍に過ぎない勇と平助にとって
全てがものめずらしく、たった今、講武所を追われてきた身には
そこは別世界のように映ったことだろう。
そこで出された酒が舶来のスパークリングワイン。
勇はエゲレス公使館で試飲済みだが
平助は生まれてはじめてのいわいる炭酸飲料。
なるほど、初めてスパークリングワインを口にした人の反応とは
まさにこれなんだ!という中村勘太郎の迫真の演技に
より一層、印象深いシーンになった。
特にドラマの初期において、
勇をはじめとした試衛館メンバーのかっこ悪さ、どん臭さが起爆剤となり
そのコンプレックスは徐々にエネルギーへと変わっていった。
このシーンは、新選組の核を作り上げてきた逸話のうちの一つだと思う。

そして何より、このドラマにとって忘れてはならない大事な小道具が
何をかくそうワインのコルク。
浦賀に来航した黒船を見に行った勇と歳三が
波打ち際に漂うコルクを、戦利品として持ち帰る。
目の前に、山のようにそびえる異国の巨大帆船に
自分たちの卑小さ、無力さを否応もなく見せつけられ
戦利品と称してコルクを拾ってくる他、なすすべを知らなかった勇と歳三。
このコルクは、勇の斬首まで、彼らの肌身から離れる事はなかった。
新選組!!の中でも、北へ進む歳三のコルクが
どんな逸話と共に描かれるのか、これもまた楽しみだ。

Shinsengumi Express!!快速!新選組!!サイト!!!: 1年前と同じ気分を少しだけ
[PR]
by henrri | 2005-11-29 14:30 | 映画・ドラマ

新選組!!

Shinsengumi Express!!快速!新選組!!サイト!!!: メイキング映像
昨年1年間、はまりにはまったドラマがNHK大河ドラマ「新選組!」
タイトルの新選組!!の、!が一つ多いのは
お正月に「新選組!!土方歳三最後の一日」が放送されるから。
新選組!が終わってから1年も経つのに
街を歩いていて、三角形が並んだ模様のある看板なんか見かけただけで
(いわゆるダンダラというやつです。)
脳髄からアドレナリンがふつふつと沸いてくる。
続編の放送が決まってからはどうも心穏やかじゃない。
昨年1年間、まさに新選組の隊士たちと共に戦い
共に生きたような気になっている僕としては
厳粛な気持ちで、土方歳三の最後を見届けるべく
1月3日の放送日に向けて、徐々にテンションが上がってるのです。
大河の放送時間には、万難を排してTVの前に陣取り
正座して “ライライ”
(新選組!のテーマ曲、愛しき友よのことね。)を歌った’04年
あの至福の時間だった日曜の夜8時の興奮が
また甦るなんて夢のようだ。
[PR]
by henrri | 2005-11-27 02:27 | 映画・ドラマ

チャイナドレスの女

チャイナドレスのマギーチャンがことのほか美しい。
立ち上がった、丈の高い襟に隠れたうなじの
柔らかく並んだひとつひとつの窪みが、透けて見えるようだ。
見る人が見たいと思う目線で映像が流れていく。
川のように澱んだり、渦巻いたりちょっと止まったり
行く末もわからずまた静かに流れたりしながら
大人の恋の断片を追った作品が、ウォンカーワイの「花様年華」
いわゆる不倫ものだけど、ラブシーンは全く出てこない。
タクシーの中で、触れるか触れないかぐらいの距離で
二人の指と指が交差する。
それだけで、タクシーの中の濃密な空気と
わずかに触れ合った指のひりひりした感触が伝わってくる。
彼らは肉の繋がりは無いのに、とても近所の目を気にしている。
彼らがこんなに罪悪感を感じているのは
気持ちの問題ではなくて
たぶん彼らが、何度も何度もいっしょに食事をしているからではないかな?
肉の旨みを知り尽くした二人が食事をするシーンはエロティックだ。
音を立てて咀嚼し、すすり、箸で弄びながら食べたりする。
唯一動物的な食事のシーン以外は
マギーチャンの美しい肢体を
チャイナドレスが覆うように包み隠しているけれど
映像は、不意に内臓のような生々しさを露呈する。
ある種チラリズムがこの映画の魅力?・・・だったりして・・・
そもそもチャイナドレスは、なだらかな曲線だけでなく
女性の骨格や肉付きを露にする
男にとっては最高の服飾文化なのだから。
[PR]
by henrri | 2005-11-10 11:05 | 映画・ドラマ

隠し剣鬼の爪をみた。

友人のれいちゃんお奨めの藤沢周平作品です。
いつものように、ランニングマシーンに乗っかりながら鑑賞。
序盤、軽快に飛ばしながらも
松たか子の美しさにはからずもペースが落ちる。

物語の舞台、海坂藩(うなさかはん)といえば
藤沢周平の生まれ故郷のほど近く
庄内平野に位置する城下町鶴岡。時は文久元年。
海坂藩のような東北の小さな藩にも
幕末のうねりは少なからず押し寄せていたようです。

海坂藩の下級武士、片桐宗蔵(永瀬正敏)は
母と妹、下女のきえ(松たか子)と共に
貧しいながらも平和な毎日を送っていました。
が、時は過ぎ、妹もきえも嫁に行き、母親は亡くなって
片桐家は櫛の歯が抜けたようにわびしい男所帯となってしまいます。

とある冬の日。
城下の小間物屋の店先で、宗蔵ときえは思いがけず再会するのですが
きえの、白いうなじにほつれかかるおくれ毛のせいでしょうか
ランニングのペースはここからグッと落ちてしまいます。
一見して、嫁ぎ先での幸薄い境遇が、ありありと影を落とすきえの背中に
思わず引き込まれてしまいました。
もちろん引き込まれたのは僕だけじゃなくて、宗蔵もしかり。
一瞬、かけてやる言葉が見つからない宗蔵は
半襟を買ってやると言うんですね。
んー・・・半襟を買ってやる・・・これは意外だった!
なにかとても即物的な行為のように思うけれど
永瀬演じる宗蔵が言うと、実に誠実に響くから不思議です。
二人の間で何気ない言葉が交わされ、きえの目から涙が溢れ出す。
しんしんと降り積もる雪は
無言のまま、虐げられた者の悲しみを覆い尽くす。

ここからはもう、ランニングとかいってる場合じゃないです。
ちょっと本腰をいれて鑑賞しちゃいました。

幕末といえば、新選組、坂本竜馬、西郷隆盛などなど
明日の日本を語り、策を労し
人を斬り倒してきた名だたるヒーローたちが群雄割拠した時代。
そんな中にあって、一人の女を守ることに命をかけた宗蔵が
かっこ悪いのかといえばけしてそうじゃない。
かつての宗蔵の同門、尊皇攘夷に翻弄され
謀反を起こした狭間弥一郎と宗蔵が
終盤、斬りあいになる場面があるのですが
この宗蔵がめちゃめちゃかっこいい。
宗蔵の、寓直なまでにひたむきな誠実さは、幕末の喧騒を
何か虚しいものにしてしまうほど重いのです。

というわけで、「隠し剣鬼の爪」
途中からランニングマシーンのスイッチを切り
僕が前のめりに正座してみることになった、なかなかの秀作でした。

んで、なにが隠し剣かというと、蜂の一刺し・・・かな?

そして今日のワイン。
トランブスティ社のキャンティ バッディオロ リゼルバ 
クローヴなどのスパイスとダークチェリーが口中に広がりました。
e0090389_2351644.jpg

[PR]
by henrri | 2005-10-04 23:30 | 映画・ドラマ